線象嵌陶芸作家 勝村 顕飛さん

白磁土の白の美しさにシンプルな黒の文様が

つかう人を惹きつける

 ずっと見ていても飽きない、思わず手にとってみたくなる、そんな愛らしい作品を創り続けているのが、陶芸作家の勝村顕飛さんだ。


 勝村さんの作品を見ていると、まず視界に飛び込んでくるのが、白と黒の調和。白磁土の白の美しさが、黒で描かれた文様を惹き立たせているのに気づく。


 そして、でしゃばり過ぎない、シンプルな黒の文様が、白磁土の白の美しさを打ち消さない。白と黒でここまで見事に表現できるのかと、思わずうなってしまいそうになる。


 器に描かれた文様はどれも愛らしく、釉薬を使わない白磁の美しさが、手に取りたいという衝動を引き起こすのかも知れない。





器の美しさを惹き立たせているもの

 白磁の器に、黒の文様で際立たせている、勝村さんが駆使する技法は、線象嵌といわれるものだ。


 白磁の素焼きしていない器に、イメージした文様を引っかいて削っていく。そこに呉須と呼ばれる黒い顔料を流し込む。顔料がはみ出さないように、撥水剤を使うことで、黒い文様が白磁の白にくっきりと浮かび上がる。

 

 言うは易しだが、実際の工程は、かなり神経を使う作業の連続だ。薄手の器に、文様を削りだす深度、削りだし部分と顔料の適性量、撥水剤の分量等、長年の経験とセンスが備わっていないと成せる技ではない。


 また、勝村さんの器は、高台の美しさが際立っているのが特徴の1つだ。見た目の美しさに加え、触れてみたときの触感が何ともいえない心地よさを与えてくれる。これでもか!と言うくらい、磨く工程には手抜きをしない勝村さんの器へのこだわりがそこにある。


 器を制作する技術を見る術として、高台を見ると良いとよく言われる。この道理からいうと、勝村さんは器へのこだわりだけでなく、技術の高さも伺えるというものだ。





波乱に満ちた陶芸家への道

 今では、美しい線象嵌の作品の数々を生み出してきた勝村さんだが、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。陶芸家になるきっかけは、高校時代、特別授業に招かれていた、陶芸作家の先生から、陶芸の面白さを感じ取ってからだ。


 高校の普通科を卒業後、陶芸の専門学校で3年間学び、益子焼の益子町で修行を積むことになる。修行を積んだ後、ふとしたきっかけで、3600坪ほどの広大な荒地(一戸建て住宅と蔵、そして、元々流しそうめんをしていたであろうテントハウス)を好条件で借りられることとなり、陶芸家の奥様と移り住み、窯をおこした。


 しかし、3年程経過し軌道に乗ってきた矢先に、この物件がいわくつきだと発覚。退去命令が出て、1週間で立ち上げた窯を追われることとなる。その後、奥様の実家が埼玉県の大宮であったため、窯を移設。現在は、奥様と2人で工房を営んでいる。





 

こだわりが詰まったスウィンググラスの曲線美の美しさ

 修行時代に培ったものは、今に活かされていると勝村さんは言う。特にフォルムにこだわったロクロの技術は、愛らしい勝村さんの線象嵌の器の根幹を成すものかもしれない。


 今回、晩酌屋オリジナルで製作いただいた、スウィンググラスは、底面の曲線美が本当に美しい。高台にも手を触れてみたくなるのだが、このスウィンググラスも、手のひらに乗せて、包み込んでお酒を飲むと不思議な愛着感に包まれる逸品だ。


 一見シンプルで、愛らしく見える作品の奥には、勝村さんのこだわりが詰まっている。

美しさはそう簡単には創り出せないということであろう。


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