江戸箸【大黒屋】竹田 勝彦さん



つかう人・つかう用途にあった箸へのこだわり

「七つの面を飛び飛びで平らなところに指がきて、

 一面が50度、いや正確には51.4度のところに・・・・・」


 七角削り箸のことを熱く語るのが、都内墨田区で江戸箸のお店『大黒屋』を構える竹田勝彦さんだ。竹田さんには、つかう人のために、時には、つかう用途のために最高のお箸をつくるというポリシーがある。


 七角削り箸でいうと、その作り方は容易ではない。箸は角材を小割にして作るため、七角削り箸は、対で面取りできる偶数面の箸より成形が難しい。特に箸先の削り作業に至っては、先端の1mmまで七角にするため、職人は息を止めて集中し削り作業に没頭する。


 では、なぜ七角にこだわるのか?

 竹田さん曰く、「箸を持つ3本の指が角に当たらないのが奇数面の箸の特徴で、七角の場合、3本の指が箸と触れ合う部分がぴったり箸の面と一致する。」と、いうのだ。確かに七角削り箸を手に取ると、そのフィット感は持ったものにしかわからない感覚だ。




「つかう人のために箸を作ろう!」と一念発起

 元々、箸の問屋で営業の仕事に従事していた竹田さん。各地の箸の産地を行き来し、若いころから箸に親しんできた。常々、「どうして、もっと握りやすい箸が世の中にないのだろう?」という疑問を抱えながら仕事をしていたという。


 箸といえば、丸か四角がメジャーで、太さや重さも、つかう人のことを考えて作られていたとは言い難かった。そんな疑問を解決するため、46歳のとき自ら、「つかう人のための箸を作ろう!」と一念発起して、大黒屋を設立したという。


 しかし、「箸は難しい・・・」と、竹田さん。ここまで歩んでこられた道が、そう容易ではなかったことが想像にかたくない。





つかう用途に応じ、想いを込めた箸たち

 大黒屋の箸は、つかう用途によっても、食べやすい工夫が施されている。例えば、「そば箸」と呼ばれるそばを食すときに用いる箸。箸先が細い四角に削られ、そばがつまみ易くなっている。箸先に向かって四角のまま細くなっているため、底についた最後のおそばまで、ストレスなくつまめる。


また、「卵かけご飯箸」という卵かけご飯用のお箸も用意されている。先端が広い平らな面で作られているため、卵で滑りやすいご飯を滑らずに食べられる工夫が成されているのだ。


 もちろん、つかう人のために形も工夫されている。ユニバーサルデザイン賞を受賞した「ずんぐり箸」は、持ち手側も先にいくほど削られていて、非常に軽いものだ。力のないお年寄りなど、箸の丈も短く、重さを感じることなく持ちやすい。長い箸が苦手な方は、子供用の箸を思いつくが、子供用は細すぎて大人の手には合わない。そんな方のために開発された箸と言ってもいい。







つくる人のこだわりがつかう人につながる

 晩酌をするときも、ちょっとした肴をつまむのに、箸は必要だ。人はみな靴を買うときは自分に合った靴を試着して選ぶ。道具である箸も自分に合った箸が好ましい。器にはお金をかけても、箸には風潮としてお金をかけてこられなかったと、竹田さんは言う。本来なら、器よりも道具である箸にこだわりがあってもいいと。


 「高いものはいいものとは限らない。しかし、いいものは高い。」自信を持った箸を提供しているからこその竹田さんの言葉だ。


 つくる人のこだわり、そして、つかう人のこだわり。


 こだわった箸を、やはり、使ってみたくなる。


©️ bansyakuya.com