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ガラス作家・坂田裕昭さん ~作品そのものが醸しだす空気を大切に~



 「ずっと、大阪に憧れていましたから!」


 坂田裕昭さんから、意外な言葉が飛び出した。

 東京で生まれ育った、根っからの東京っ子の坂田さん。



 大阪に興味があり一度住んでみたいと思っていたそうだ。


 意外と表現すると、大阪の人に叱られるかもしれないが、大阪人が東京を夢見て上京する話はよく聞くが、東京の人が大阪に興味を持つ話はあまり聞いたことがない。



 ただ、坂田さんと話していると、大阪に興味を抱く意味がなんとなくわかる気もする。根っから明るいし、ノリも大阪のそれに近いのだ。

 もちろん、大阪の勤務経験から、坂田さん自身が大阪にどっぷり漬かってしまったのかも知れない。たこ焼きやお好み焼きといった、粉モノは、いまでも大好物らしい。




 

グラム単位、ミリ単位の厳しい指導

 1973年東京で生まれた坂田さんは、阿佐ヶ谷美術専門学校で3年間美術全般に加え家具などクラフトものを中心に学ぶ。


 卒業後、紹介で大阪の型吹きガラスメーカーに勤務することになるが、就職を決めた理由は、ガラス制作そのものではなく、興味を抱いていた大阪で住めるということだった。



 ガラスメーカーでは、型吹きで毎日いくつもの製品を吹き続けた。

 製品は、工芸製品ではなく、フラスコやビーカーのような、可能な限り均一に仕上げる必要があるもので、重さ、厚みなど一品一品にチェックが入り、グラム単位、ミリ単位で厳しく指導された。



 工業機械で均一に大量生産されるものではなく、型吹きといえども、人がひとつずつ吹いて仕上げていくもの。勤務期間6年の型吹きの実績が、坂田さんの今につながっている。




ガラスらしさ、自分らしさを大事に

 大阪での勤務を終え、本格的にガラス作家への道を歩むため、富山ガラス造形研究所に2年間通い、研鑽を深めた。


 その後、富山ガラス工房に3年間勤務。現在は独立してガラス作家として活動している。



 元々、家具や木工クラフトのような、エッジの効いた四角いものに興味を覚えていたが、ガラスにおいてもシャープなものづくりを現在でも目指す。



「色、見た目などから、そのものが醸しだす空気が感じられるものがつくりたい。」



 形、重みに工夫を凝らしながら透明感や質感を意識し、ガラスらしさ、自分らしさを最大限引き出すものをつくりあげていく。




ぐい呑み、片口が描く、美しいスウィング軌道

 今回、晩酌屋オリジナルで制作いただいた、スウィンググラスは、底が丸くスウィングするぐい呑みに加え、片口も底が丸くスウィングしてくれる。






 スウィンググラスは、傾けても起き上がる必要があり、中にお酒を入れても、こぼれないのが絶対条件だ。


 ぐい呑みのみならず片口が綺麗なスウィング軌道をするというのは、坂田さんがこれまで培ってきた技術力以外の何ものでもないだろう。





 今回の片口は、丸みも厚みも形状もしっかり均一に仕上がっているのに加え、片口全体のバランスがとれているため、底が平面の片口と同じように安定感もある。そして、スウィングさせても音がしない底面のカーブの美しさは、大阪時代の型吹きの技術と、富山時代の宙吹きの技術の結晶ともいえる。



 坂田さんが一作品ごとに目指す、“そのものが醸しだす空気”を、まずはスウィンググラスで感じとっていただければ幸いだ。